人はなぜ、自然に惹かれるのでしょうか。
どれほど建物が進化しても、
暮らしの中心に緑を求める気持ちは変わりません。
自然は、いつもゆっくりと姿を変えています。
風で揺れる葉の影や、
時間とともに移り変わる光の濃淡。
変わり続けるのに、決して急かしてこない──
この自然がもつ「ゆらぎ」は、
人間の感覚と近いリズムを持っていると言われています。
そして自然は、どれだけ姿を変えても“本質は変わらない”存在でもあります。
木は木のまま、
空は空のまま、
四季は巡るまま。
その揺らぎの奥にある確かな安定感が、
忙しない日々の中で人が求めてしまうものかもしれません。
変化しつづけるのに、安定している。
この矛盾したように見える関係性こそが、
人が自然に惹かれる理由のひとつではないでしょうか。
中庭は、ただ緑を置く場所ではありません。
すべてがその家のために整えられた“コントロールされた自然”です。
その緑がそばにあるだけで、
目まぐるしく動き続ける社会の中にあっても、
心が立ち戻れる場所が生まれます。
変化と安定。
その二つを同時に受け止める、暮らしの中の自然。
中庭を設える答えなのでしょう。